前回に引き続いて、人事制度改革がらみです。
前回は、エンジニアのキャリアパスに関して、
処遇も含めてアップしていく道が開けたことについて書きました。
今回は、新人事制度作りに関わった立場として、こだわった事、工夫した事について書こうと思います。
2023年7月に施行した10年以上振りの人事制度改定は、
そもそもの処遇改善もセットで行なわれました。
ここ最近の十数年は、規定に沿った年間の昇給がありつつも、
ベースアップという方式は取っていませんでした。
そのかわり、
全社として年間の計数予算を大幅に達成した場合には「決算賞与」という形で社員に還元したり、
リモートワークをすることに対して、その自宅での光熱費を補助する目的での「リモートワーク手当て」、
自己研鑽を促す意味での「学び手当て」等の形で処遇の改善を図ってきていました。
その間にも、世の中では、物価高が進み、採用活動の環境悪化が顕著であり、
同業他社も、初任給アップを含めて取り組んでいます。
そこで、今回の人事制度改定においては、初任給アップ、それと並行して社員の処遇改善が行なわれました。
ただ、今日書きたいのは、処遇改善についてではありません。
処遇改善も含めた人事制度改定をするこの機会に、少しでも、みんなの前向きな気持ちやスキルを
ストレッチして欲しいという思いからの工夫についてです。
今回の人事制度改定においては、「等級制度」「評価制度」「賃金制度」をそれぞれに改定しています。
まずは「等級制度」に関してですが、
それぞれの等級に求めることを網羅的に記載した「等級定義書」も、「昇降格基準」も、全面刷新しました。
等級の定義も名前も変え、以前からの単純な横スライドにはしませんでした。
みんなが、少しだけ上の等級に上がる感じ。斜め上の等級に上がっていくようにしています。
それにより、給料等もアップしますが、期待される役割や求められるスキルもアップします。
「上位者の下で仕事を遂行する」ことを求められていたメンバーは「一人前・自律遂行」を求められるようになり
「自らの専門性を活用して下級者を指導する」ことを求められていたメンバーは、
明確に「確立した専門分野を持ったリーダー」を求められるようになる等々。
対課題であったり、対人・組織の面においても、
「業績への貢献」「変革・改善への貢献」「組織貢献・協働」「育成・成長」の各項目で、
等級別のハードル設定をしています。
そして、それぞれのハードルをクリアできているサインとなる意識や行動ということで、
実際の場面での様々な具体的事例も列挙しています。
次に「評価制度」に関してですが、
ここでの最大の工夫は、各評価項目ごとの個別評価に至るまで、「6段階評価」にしたことです。
これまでは、各項目の評価も最終評価も「5段階評価」でした。
多くのメンバーの人事考課をしていると、成功と失敗がハッキリしていることばかりではありませんし、
メリハリの付いた評価をすることには結構なパワーを使いますよね。
そうなると、自ずと、フワッとした中評価(5段階の真ん中)が増えてしまいます。
今回は、そこにメスを入れて、「6段階評価」にすることで、曖昧な中評価の排除を狙っています。
1つ1つの項目に至るまで、良いか悪いかの境目を明確にするのは疲れますが、
発揮能力と貢献に応じたメリハリある評価を目指しています。
処遇改善や人事制度改定というイベントは、それ自体にも大きな意味があり、重要な出来事ですが、
マネジメントを担っている者としては、その中身であったり、その効果、そして日々の運用が何よりも重要です。
人事制度も、処遇改善も、貴重なマネジメントツールだと捉えて、みんなの成長やモチベーション向上に繋げる為、
制度の中身や、処遇改善内容を誰よりも詳しく読み解き、ツールとして有効活用していきたいと思います。
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